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人類がAIにセーブされないためには、自らの歴史なり知能だけでなく意識の成り立ちを学び、新たな形で考えて行動する必要がある。そうでなくてはAIにも相手にされない。
とはいえ、新たな形で考え行動するのは容易でない。何故なら私たちの思考・行動は、行動のイデオロギー、社会制度の制約を受けているからである。
更に昨今、人間は自由市場や群衆の知恵や外部のアルゴリズムへと権威を明け渡している。私たちは殺到するデータを処理できていない。今、人間力をつけるには、溢れる情報の中で“何を無視するべきかを知っていること”が必須である。
その(人間の未来については創造に富んだ考え方を身につける)ためには今日、私たちが受けている条件付きの源泉、つまり人類の生い立ち、歴史、科学的性質などについて、幅広い学問をする必要がある。そして、色んな知識に対する謙抑的な行動を取る態度が重要である。
映画「天外者」において、五代友厚が何故に歴史に埋もれていたかについて、批判するだけでは十分でない。人間、ひいては歴史の意思決定のプロセスを考え、経済と対比して実行するという態度こそが肝要である。
その経済も一片の知識ではなく、統計学のそのものである。そして、統計をつまり経済を理解することが人間にとっては非常に難しいことを覚知するべきである。経済学を「deal」という言葉を使い、さも理解したかのごとく発言することは異常である。
その上で我々はAIが言うように、生き物はアルゴリズムに過ぎないか、生命は本当にデータ処理できないかを自らの意識で挑戦してみよう。
(ユヴァル・ノア・ハラリ(著)、柴田浩之(訳)『ホモ・デウス(下)―テクノロジーとサピエンスの未来』河出書房新社、2018年、244~250頁より引用)
令和7年11月28日 廣 田 稔



