トランプ氏の考え自体その場限りの快、不快の判断によるもので、論評に足るものでないと常々言ってきた。いずれにしても政治家のdealという言葉で政治政策を語る異常さには鳥肌が立つ。
トランプ氏は国際関係において、正義・道徳・国際法等考慮に値しない重要なのは、力だけだということである。その考え方こそ自由主義的秩序が台頭する以前の数千年にわたる支配的考え方であったのである。
自由の理念に基づく近代的な民主主義、たとえそれが仮説であっても到達する「歴史の終わり」ではなく、不断に目指し続けなければならない「歴史の目的」に他ならないのではないかと思ないとどうしようもないのではないか。
日本が世界で一等国として認められていないのは、米国の属国であるからと言われてきたことは日本が国連の常任理事国になれなかったことから明白である。
今、日本が独立した一等国になれるチャンスがやってきた。トランプ氏のおかげである。資源のない日本は、自由貿易制度が無いと生きていけない―萎縮せずアニマルスピリッツを発揮する企業を育てて、限界を了知した上で前進するべき時期にきている。
そこで推薦する内田樹のレヴィナスの言葉を見てもらいたい。
「無秩序な世界、善が勝利に至らない世界における犠牲者の立場、それが受苦である。受苦が神を打ち立てる。救援のためのいかなる顕現をも断念し、十全に有責である人間の成熟をこそ求める神を。(DL,p.203)」
令和7年6月7日 廣 田 稔